2015年度冬休みに読む本⑥ 三浦綾子「泥流地帯」「続 泥流地帯」(新潮文庫)
再び蔵書点検の手が止まるほど読むのがやめられない2冊に出会いました。(お察しの通り、まだ文庫棚から脱出できません…)
三浦綾子記念文学館がある旭川市にいながら、司書は一冊も読んだことがありませんでした。
文庫棚にこの2冊があるのは○○年間ずっと棚を触っているのでわかりきっていましたが、なぜか手が伸びず。
今回は、文庫本は裏表紙にあらすじが印刷されているという利点が発揮されました。
「大正15年5月、十勝岳大噴火。(中略)泥流が一気に押し流してゆく……。」
なに!?
そしてめくったページは、主人公が高等小学校の教師から「農家の子どもは市街の子どもと比べて云々」と小言を言われ唇を噛んでいるシーン。
あれ?噴火は?
だがしかし、大正時代の旭川周辺事情を子細に書いてくれていることに興味が尽きず、ページをめくる手がとまりませんでした。
戦前に教師をしていた三浦ならではの、児童側から見た当時の分教場・尋常小学校・高等小学校、そして教師となった主人公から見た子どもを愛おしく思う気持ちなどの描写がかなりの分量を占めています。ですから教員志望の高校生にも読んでもらいたい。
それからこの小説が次へ次へと読者を進める力は、登場人物の立ち位置が(主人公から見て)ころころ変わることにある。主人公・耕作の家族、学校の先生、友達、街の有力者、同じ部落の大人たち、幼馴染へ対する考えです。
耕作の9歳から20歳過ぎまでを描くという考えが変わりやすい年頃というのを除いても、この主人公は周りの状況を素直に取り込み「この人は○○だと思っていたが、実は●●なんじゃないか」「◎◎だと決めつけていたがそんなことはなかった」などきちんと我が身を省みることができる気持ちの良い人物でした。
まだまだ語りたいことはありますが、これ以上はネタばれになりそうなので…。
「日進部落」として登場する舞台は北海道上富良野町(日新地区)にありました。(リンク先地図の町域東端には十勝岳山頂が含まれていますね。この一本道を耕作は市街へ・JR富良野線上富良野駅周辺へ通っていたのかしら。北へひょいっとスクロールするとすぐ旭川市です)
また、「三重団体」という名称の通り三重県から集団で入植した地区の話も出てくるので、三重県の人は「泥流地帯」をぜひ読みたまえ!
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・旭川市の書店 冨貴堂の記事 作品の舞台・文学碑を訪ねて「泥流地帯」
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